第124章 田村家

「ただの趣味でピアノを弾いてる人です」

山内孝浩は信じられないというように眉を跳ね上げた。

「趣味でピアノ?」

「きっと謙遜ですよ。師匠って、名前を出せば通るようなピアニストなんでしょう?」

「名前、ね」橘結衣は首を横に振る。「違う。ピアニストじゃないよ。仕事は――寺の裏庭の掃除」

「え……」

山内孝浩は顎に手を当てた。

「その人の名前は? 聞いたことがあるかもしれない」

橘結衣は淡々と答える。

「知らない。師匠、私に名乗ったことないから」

「山内さん。私にはもう師匠がいる。だから、あなたに弟子入りする理由はないの。分かってほしい」

山内孝浩はしばらく黙り込み、やがて小...

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